オカルト(中心)ライターのスピンオフ原稿

キャリア28年の翻訳家/ライター宇佐和通の日々のあれこれ

魔法という中2病

子どもの頃から、いわゆる”奇書”をこよなく愛してきた宇佐和通です。

 

この間中野のまんだらけに行った時に、約40年ぶりに再会した本があります。『西洋呪い術秘伝―禁書トロルドムの魔力』というこの本を僕が初めて手に取ったのは、中学に入ったばかりの頃でした。


おどろおどろしいタイトルの本には、〝いかなる種類の勝負事にも効力を発揮する護符〟とか〝意中の異性を思いどおりにする方法〟といった、中学生の心をいやが上にもかきたてる文言が並んでいました。目次だけ見てすぐに買って、何日かかけて儀式に必要な道具を揃え、親が寝静まった後にさまざまな秘術を執り行いました。

 

魔法はさまざまあったのですが、なんと言っても力が入ったのは「意中の異性を思いどおりにする方法」です。儀式に必要なもののひとつにジャコウのエキスがあったので、あちこちに電話をかけて探しましたが、なかなか見つかりません。最終的に横浜にある漢方薬のお店で見つけて値段を尋ねると、5グラム1万円と言われました。中学生にとってはものすごく大きな金額です。しばらくはジャコウエキス貯金をしていましたが、半年くらいで心が折れました。そこで〝異性がいやでも寄って来る秘法〟に方向転換して、説明通り満月と新月の夜に儀式を執り行いましたが、効き目はまったくありませんでした。

 

僕の場合、中2病の具体的な症状は魔法という変わったベクトルで出たわけです。『西洋呪い術秘伝』で魔法デビューして以来、アンブローズ・ビアスの『悪魔の辞典』を読み込んだり、タロットカードを何種類か買ってきてただ眺めたり、さまざまな種類のキャンドルを集めたりして、カオスな世界へのめり込んでいきました。当時は『木曜スペシャル』的な番組でオカルティズムが大きく取り上げられ、少し前に始まっていたノストラダムスブームもまだまだ勢いがあり、僕のカオスメーターは上昇の一途を辿っていたのです。

 

高校生になって『ムー』と『週刊プレイボーイ』が愛読書になり、カオスとエロスのバランスが整った時代が到来します。その後のハイスクールライフでカオス系に大きく傾いていき、深まって行って、今の僕の在り方につながっています。というわけで、今の僕を作ったのは、ピンポイントに言えば『西洋呪い術秘伝―禁書トロルドムの魔力』だったということになります。

 

今日もここまで読んでいただき、ありがとうございました。次回のアップでお会いしましょう。