オカルト(中心)ライターのスピンオフ原稿

キャリア28年の翻訳家/ライター宇佐和通の日々のあれこれ

LATE BLOOMERS:遅咲きという売れ方

ちょっと昔のハリウッド映画にハマっている宇佐和通です。
 
昔買ったDVDが大量に出てきたので、ちかごろは環境ビデオ的に流しながら仕事をしています。そんな中、キラッとするものを感じた作品がありました。ヒュー・グラント主演の『Re: Life ~リライフ~』です。
 
この映画、相手役のマリサ・トメイのキャスティングとキャラクター設定も含め、確信犯的にラブコメ王道ライン狙い以外の何ものでもない作りです。プロット的にも、よい意味でまったくサプライズがなく、ラストまで思い描いた通りに進んでくれて、さらにインスピレーショナルな要素が盛り込まれ、安心して楽しむことができます。
 
マリサ・トメイの役どころは子育てが一段落して大学に戻ったシングルマザー。大学で脚本のクラスを取っている彼女が、バイトをしている大学のブックストアでヒュー・グラント演じる主人公の元有名脚本家に、とある本を見せる場面があります。
 
本のタイトルは『Late Bloomers』(遅咲きの人々)。各界の著名な遅咲き人(〝おそざきびと〟と開いて読みたいですね)たちのエピソードを集めたノンフィクションです。気になったのでアマゾンで調べてみると本当に出版されていることが分かったので、すぐにキンドル版を買って読んでみました。デザイナーのココ・シャネルやKFCの創始者カーネル・サンダース、そしてマザー・テレサ。いずれも、世間一般の感覚から見れば遅咲きと形容される人ばかりが75人紹介されています。
 
たとえば『ハリー・ポッター』シリーズの作者J.K.ローリングは、シングルマザーという境遇で子育てに追われながらとにかく書き続けました。『ハリー・ポッターと賢者の石』を出版できたのは30代半ばの頃。5年かかって書き上げたこの作品は立て続けに12社の出版社から断られました。出版のきっかけとなったのは、とある出版社の社長の8歳になる娘が第1章を読み、父親に版権を買うよう頼んだことだったそうです。この子は、どうしても物語を最後まで読みたかったのです。
 
チャールズ・ダロウというエンジニアは、自分が考えたボードゲームにハマり、絶対に売れると信じ込んであちこちの会社に売り込みましたが、まったく受け容れられませんでした。そこで、貯金をすべてはたいて5000セットを自主制作で作って売りだしたところ、あっという間に売り切れました。このゲームの名前は『モノポリー』。知らない人はいませんよね?
 
2008年、ハーバード大学の卒業式に招かれたJ.K.ローリングは、スピーチの中に次のような文言を盛り込みました。
 
「人生には、避けられない失敗があります。何かに失敗しないで生き続けていくことは不可能です。何も失敗しないよう極力気を付けながら生きることもできるでしょうが、そんな生き方はそれ自体が失敗です」
 
回遊魚みたいなフリーランス人生を送ってきた僕にとって、染み入る言葉です。悔いを残さないために、失敗を恐れず攻めていきましょう。

 
今日もここまで読んでいただいてありがとうございました。次のアップでお会いしましょう。